「まとまった資金があるから、NISAで一括投資してみようかな」
「新興国のアクティブファンドって、一発逆転の夢がありそう!」
ちょっと待ってください。その投資、本当に大丈夫ですか? 前回までの記事では、楽天NASDAQ100や楽天SOXファンドが大化けした華やかな実績をお話ししました。


しかし、投資の世界はそんな甘い話ばかりではありません。実は筆者、過去に「ベトナムロータスファンド」に50万円を一括投資し、買った直後に暴落を喰らって3年間も「塩漬け」にするという手痛い失敗をやらかしています。塩漬けにして株価の回復を待ち、53万円(+3万円)で命からがら逃げ切り利確をしました。「プラスで終わったなら勝ちじゃないの?」と思われるかもしれませんが、これは完全なる「大敗北」でした。
今回は、一見勝ったように見える「+3万円」の裏に隠された恐ろしい機会損失と、一括投資が持つ恐怖について、筆者のリアルな黒歴史を解説します。
買った直後の悲劇と3年間の塩漬けタイムライン
「ベトナム・ロータス・ファンド」とは
経済成長が著しいベトナムの株式市場に丸ごと投資し、市場平均以上のリターンを目指す「新興国×アクティブファンド」です。当時、高い人口ボーナスと高い経済成長率を背景に「次の中国になる」と大きな注目を集めていたベトナム市場。購入した理由は単純で「前年度のリターンが高かったから」です。「これは本当に来ている!」と感じ、2022年3月、筆者のポートフォリオの「攻めの投資枠」としてこのファンドに50万円というまとまった資金を一括投資しました。本当はもっと大きな金額を入れたいと思っていましたが、当時「攻めの投資枠」のファンドを複数購入して模索していたため、この金額に落ち着きました。
しかし、この「新興国アクティブファンド」という選択こそが、のちに大やけどを負う大きな罠でした。実際の値動きのグラフを見てみましょう。

「ベトナム市場は来ている!」と意気込んで50万円で購入しましたが、なんと購入直後に下落し始めました。その後、底値で停滞するという状態が1年以上続きました。

50万円で購入したファンドの底値停滞だったときの金額は約37万円。筆者の投資ライフで初めてマイナスの資産を持つという経験をしました。

底値停滞した後は上昇して元本スレスレのところまで回復しました。しかし、元本スレスレだったため売却のタイミングがつかめず、また長期間保持するという状態が続きました。結局、2025年8月にようやく53万円で売却することができ、購入から売却まで3年以上保持していたことになります。
なぜ「3万円のプラス」なのに大敗北なのか?
3年以上もの長きにわたる塩漬け期間を経て、ようやく元本を回復し、最終的に「+3万円」の利益で逃げ切ることができた筆者のベトナムロータスファンド。画面上でプラスの数字を見たときは、正直「命拾いした…!」とホッとしました。利益が出ている以上、一見すると損はしていないように思えますよね。しかし、投資の現実(リアル)を冷徹に計算してみると、これは完全なる「大敗北」だったのです。その理由は、目に見えない形で私たちの資産を削り取る「2つの闇」にあります。
【闇その1】毎年自動でむしり取られる「年2.167%」の高コストの罠
まず、このファンドを保有している期間中、ずっとかかり続けていたランニングコストが異次元の高さでした。優良なインデックスファンド(オルカンなど)の信託報酬が年0.1%を切るのが当たり前となった今の時代において、ベトナムロータスファンドの信託報酬はなんと年2.167%(税込)。さらに、新興国アクティブファンド特有の「隠れコスト」も上乗せされます。これがどれくらい恐ろしい数字か、具体的な金額に直してみましょう。
- 50万円を預けているだけで、毎年約1万円以上のコストがファンドの資産から自動的に差し引かれる
銀行の口座から毎月引き落とされるわけではなく、私たちが目にする「基準価額」から毎日日割りでシレッと引かれているため、非常に気づきにくいのがこのコストの厄介なところです。3年間で、実に3万円以上のコストを運用会社に支払い続けていたことになります。ベトナム株の成長の果実を、高いランニングコストがガリガリと食いつぶしていたのです。
さらに、このファンドには売却時にも罠があります。解約時のペナルティとして0.3%の「信託財産留保額」が徴収されるのです。53万円で売却した際、約1,500円がその場でむしり取られました。オルカンや主要な米国株ファンドであれば、今やこの売却ペナルティは「なし(無料)」が常識です。
「増やすための投資」なのに、おびただしい量の手数料を支払い続ける――投資の初心者が高コストのアクティブファンドに手を出さない方が良いという1つ目の闇です。
【闇その2】最強の機会損失。もし王道のオルカンやS&P500に投資していたら?
2つ目の闇。これこそが、筆者がこの投資を「大敗北」と断言する最大の理由です。それが「機会損失(タラレバ計算)」です。筆者がベトナム株の暴落に青ざめ、50万円が塩漬けになっていた2022年3月から2025年8月までの約3年間。実は、世界中の株式市場、特に米国株や全世界株は上昇相場を迎えていました。もし、あの恐怖の一括投資をした日に、同じ50万円を王道の「オルカン(全世界株式)」や「S&P500」などに一括投資して、3年間完全に放置していたらどうなっていたでしょうか?当時のチャートから現実的なシミュレーションをしてみると、驚くべき結果になります。
- オルカンやS&P500に投資していた場合: 3年後、50万円はおよそ80万円〜100万円近く(+60%〜100%)にまで大化けしていた可能性が極めて高いのです。
筆者がベトナム株のマイナス画面を見て「早く元本に戻ってくれ…」と祈っていた3年間、王道のインデックス投資信託を買っていた人たちは、寝ているだけで資産を1.5倍〜2倍に増やしていた。これが残酷な投資の現実です。
この失敗から学んだ「一括投資」の本当の恐怖
「一括投資をした直後に下落が始まる」
これは投資の世界では本当によくある話ですが、実際にこれを自分の身銭で喰らってみると、精神的にかなりのダメージを受けます。投資した金額が大きければ大きいほど画面上のマイナス額も膨らむため、受けるショックは想像以上に深刻です。今回、筆者が長期間の暴落でもパニック売却(狼狽売り)せず冷静でいられたのは、15年以上という長い投資経験があったからに他なりません。投資の荒波を経験していたため、「元本割れしたとしても、市場が回復すればいずれ元の金額に戻ってくる」という確信があったからです。しかし、メンタルを保って耐え続けたとしても、投資の「数字」としては完敗でした。今回は3年以上というあまりにも長い期間「塩漬け」にしたことで、アクティブファンド特有の高い運用コストを毎日裏で払い続けることになり、前の章で述べたような致命的な「機会損失」を生み出してしまったからです。どれだけ長期保有する握力があっても、選んだファンドが高コストなアクティブである時点で、時間は味方になってくれませんでした。改めて、「低コストのインデックスファンドが無難である」という鉄則を骨身に染みて思い知らされる教訓となりました。

直近が「好成績」だからこそ際立つ、一括投資のギャンブル性
ちなみに、この記事を執筆している2026年6月現在、直近1年間のベトナムロータスファンドのリターン(年率)を調べてみると、なんと「プラス約29%」と非常に優秀な成績を収めています。これだけ見ると「やっぱりベトナム株アクティブは夢がある!」と思うかもしれません。しかし、これこそが一括投資の本当の恐怖です。
- 絶好調のタイミングで買った人は「爆益」になる
- 筆者が買った2022年3月のように、タイミングが最悪だと「3年の塩漬けの末に実質大損」になる
入金する「その一瞬」のタイミング次第で、天国と地獄が真っ二つに分かれてしまう。一括投資はまさに「タイミングのギャンブル」であり、一般の個人投資家がコントロールできる領域ではないのです。
まとめ:初心者は王道の「積立投資」が正解
今回、筆者が身を以て体験した「新興国アクティブファンドへの一括投資」は、何年も元本割れが続くという非常に苦しい結果になりました。しかし、もしこれが一括投資ではなく、毎月コツコツと同じ金額を買い続ける「積立投資(ドルコスト平均法)」だったらどうだったでしょうか?株価が下がっている暴落期には「安くたくさんの量を仕込めるチャンス」に変わり、株価が回復したときには一括投資とは比べ物にならないほど大きなリターンを生み出していたはずです。同じ3年という保有期間であっても、結果は180度違っていたでしょう。入金するタイミングを完全に分散できる「積立投資」こそが、数ある投資手法の中で最も合理的であり、何より私たちのメンタルに一番優しい方法なのです。だからこそ、日々の生活や仕事で忙しい多くの一般の個人投資家にとって、これ以上ない正解ルートになります。
投資は「小さく始めて、長く続ける」が最強の鉄則
「でも、まとまったお金がないと資産なんて増えないんじゃ……」
「初心者向けの具体的な積立って、どうやればリスクを抑えられるの?」
そう不安に思う方も多いかもしれません。そこで次回は、「月1万円の投資」からスタートし、実際に1,000万円以上の資産を築き上げた筆者の実体験をベースに、初心者がリスクを極限まで抑えて手堅く積立投資を始めるための具体的なステップを徹底解説します。
一括投資の恐怖を避けて、メンタルをすり減らさずに着実に資産を増やす「王道のロードマップ」を一緒におさらいしていきましょう。


