ヤマハのAVアンプでホームシアターをやっていると、「プレゼンススピーカー」という聞きなれない用語が出てきます。プレゼンススピーカーとは、いわゆるハイトスピーカー(天井スピーカー)のことで、ドルビーアトモスが普及した現在ではハイトスピーカーと聞いた方がしっくりきます。しかし、ヤマハが敢えてプレゼンススピーカーという用語を使い続けていることに意味があって、ここにヤマハのAVアンプの能力を最大限引き出すのに重要なヒントが隠されています。
出典:ヤマハ公式サイト
上のイラストのFPLとFPRがフロントプレゼンススピーカーで、ヤマハのAVアンプにおけるドルビーアトモスの天井スピーカーのおすすめ配置として説明書に記載されています。
長い年月をかけて熟成されてきたヤマハのDSP
初めは特に気にならなかったプレゼンススピーカーという用語ですが、ホームシアターに慣れてきた頃に、何でそんな用語を未だに使っているのか気になるようになってきました。ヤマハの公式サイトを調べてみるとDSP(デジタルサウンドプロセッサー)に関する記事があり、どうやらドルビーアトモスが誕生するよりも前に高さ方向の表現を試みた技術のようです。一般的にDSPは、映画館やコンサートホールのような臨場感あふれる音響効果を好みで選択することができる機能で、ヤマハの場合だと「シネマDSP」が有名です。ヤマハは、この独自の音場創生技術「シネマDSP」を1986年から展開しており、その中で高さ方向の音を表現する「プレゼンススピーカー」が生まれました。ドルビーアトモスは2012年に登場しましたが、ヤマハはそれ以前からプレゼンススピーカーを通じて、音の立体的な表現を長年追求してきたと言えます。
とても興味深い内容なので、ヤマハユーザーの方は是非読んでみてください。
→ シネマDSP、革新を続けるテクノロジー(ヤマハ公式サイト)
シネマDSPによる新しい音楽体験が心地いい

筆者のホームシアターは、一般的な6畳程度の部屋に作った5.1.2chのスピーカー配置です。AVアンプはヤマハ RX-V6Aで、フロントプレゼンススピーカーとして使用しているのは、ヤマハ NS-B210です。
このホームシアターで特に気に入っているのが、シネマDSPで聴くAmazon Music Unlimitedの音楽鑑賞です。シネマDSPのコンサートホールやライブハウスを表現した音響効果が本当に気持ちよくて、ステレオアンプで聴く音楽鑑賞とは一味違った新しい音楽体験ができます。当初、映画やゲームを楽しむ目的で作ったホームシアターでしたが、まさか映像を必要としないコンテンツである音楽鑑賞が、こんなにも楽しいというのは意外でした。
ちなみにAmazon Musicは、無料版のSD音質は問題外なので、ハイレゾ音源が再生可能な有料版のUnlimitedが必須です。
外してみて気付いたプレゼンススピーカーの存在感

PS5の3Dオーディオに対応したゲームをホームシアターでプレイしていて上方の音場に違和感を感じたので、フロントプレゼンススピーカーを取り外し、視聴位置の真上(頭上)に設置してみました。頭上に設置したことにより、PS5の3Dオーディオによるゲームプレイは快適になりましたが、ヤマハのシネマDSPを台無しにする結果となってしまいました。この状態で音楽鑑賞しても奥行きがなく、映画を見ても迫力がありません。上方の音が自然に聞こえるのと引き換えに、つまらないホームシアターとなってしまいました。やはりヤマハがおすすめするスピーカー配置にしたときにシネマDSPの効果が最大限発揮されるようです。

今思えばホームシアターを始めたばかりの頃、小型のスピーカーを並べていましたが、サブウーファーもない7つのスピーカー(5.0.2ch)で1万5千円程度しか掛からないにもかかわらず、とても感動したのを覚えています。当時は気が付きませんでしたが、フロントプレゼンススピーカーの立体的な表現力が凄かったのだと思います。

筆者の再生環境の場合、AVアンプの自動音響測定の値より、フロントプレゼンススピーカーの音量を強めにした方が好みです。
2組の天井スピーカーを切り替えて使うことに

ホームシアターでPS5の3Dオーディオに対応したゲームをプレイするなら、天井スピーカーは頭上に設置するのが正解でこれは譲れません。
しかしフロントプレゼンススピーカーの感動体験がどうしても忘れられず、こちらも絶対に外せません。両方の良いとこ取りをするなら、天井スピーカーが複数設置できるAVアンプに買い替えるのが正解でしょうが、今回は2組の天井スピーカーを用意して用途によって切り替えて使うという方針に決めました。

天井スピーカーの切替に使うのは「スピーカーセレクター」です。1組のスピーカーケーブルが途中で2組に分かれるような便利な装置はないかと、ネット上を探していたら既に沢山の商品がありました。これがあれば天井スピーカーを切り替えて使うことができます。

スピーカーセレクターによって天井スピーカーを切り替えて使えることが分かったので、新たにもう一組の天井スピーカーを用意する必要があります。ヤマハの場合、プレゼンススピーカーの表現力が素晴らしいので、ここに投資する価値があると考えて、前回のNS-B210よりひと回り大きなスピーカーを選びたいと思いました。ヤマハの公式サイトでスピーカーのラインナップを見ていると、プレゼンス用としてNS-B500という商品があったので、今回はこのスピーカーを試してみることにしました。

NS-B500を実際に手にしてみると、思ったより大きかったことに驚きました。ウーファー径が12cmもあり、フロントスピーカーとして十分使えそうなくらい立派な作りです。フロントスピーカーと並べてみるとよく分かりますが、特に奥行があって分厚いので、こんな分厚いスピーカーを壁掛けできるか不安になるサイズ感です。

実際に壁掛けしてみると、意外にもしっくり収まりました。思ったより安定していて問題なさそうです。

前回使用していたヤマハ NS-B210
このスピーカーに対して特に不満があったわけではありません。新品が5千円台で買えて、手頃なサイズ感で天井に設置しやすく、まさにコスパ最強の天井スピーカーです。

これで2組の天井スピーカーを用途によって切り替えて使うことができるようになりました。
- フロントプレゼンススピーカー:シネマDSPの効果が最大限発揮できるスピーカー配置。壮大な音場空間が魅力の大迫力ホームシアター。
- オーバーヘッドスピーカー(頭上):ホームシアターでPS5の3Dオーディオに対応したゲームをプレイするのに最適なスピーカー配置。壮大さよりも上方の音の位置情報の正確さを優先させたスピーカー配置で、まるで自分がゲームの世界に入ったような没入感が得られる。