UPS(無停電電源装置)は、停電時に機器を安全にシャットダウンさせるための時間を確保したり、短時間の停電や電圧変動から機器を保護したりするために使用されます。適切なUPSを選ぶには、接続する機器の合計消費電力(WまたはVA)と、必要なバックアップ時間(分)を考慮する必要があります。
今回は、実際に停電から守りたい機器として、防犯カメラシステムとPS5 Proを接続する場合を例にして、必要なUPSを選ぶための計算方法を解説します。
UPS選定の計算方法
UPSの選定には、W(ワット) と VA(ブイエー) という2つの電力単位が重要です。
- W(ワット): 実際に機器が消費する有効電力です。
- VA(ボルトアンペア): 皮相電力とも呼ばれ、有効電力と無効電力の合計です。多くのUPSはこのVA値で容量が表示されています。
一般的に、VAはWよりも大きくなります。VAからWに変換するには、力率(Power Factor) を使用します。力率はW ÷ VAで表され、通常0.6~0.8が目安です。メーカーによっては力率が明記されている場合があります。
計算手順
- 接続機器の消費電力(W)の合計を計算します。
- 合計消費電力(W)をVAに変換します。
- 合計W ÷ 力率(例: 0.7) = 合計VA
- 必要なバックアップ時間を確認します。
- 停電時にどのくらいの時間、機器を稼働させる必要があるかを決めます。
防犯カメラシステムのみを接続する場合

先ずは、防犯カメラシステムのみをUPSに接続する場合で必要なUPSの容量を求めます。筆者の防犯カメラシステムは、防犯カメラ用のビデオレコーダーに防犯カメラが1台接続されている状態ですが、将来的に複数台追加した場合も考慮して計算します。ビデオレコーダーの中にはHDD(ハードディスクドライブ)が搭載されていて、このHDDを停電などによる急なシャットダウンから守るのが、UPS導入の主な目的です。
機器の消費電力
- 防犯カメラ用ビデオレコーダー: 9W
- PoEカメラ: 30W(カメラ1台分)
合計消費電力(W)
- 9W + 30W = 39W
必要VAの計算
- 力率を0.7と仮定します。
- 39W ÷ 0.7 ≒ 56VA
バックアップ時間は通常5〜10分程度で十分な場合が多いです。将来的にカメラを数台追加することを考慮すると、合計消費電力が大きくなるため、余裕を持ったUPSを選ぶことが推奨されます。例えば、カメラを5台に増設する場合、消費電力は 9W + (30W × 5) = 159W となり、必要VAは約 227VA になります。
したがって、最低でも300VA以上のUPS を選んでおくと、将来的な拡張にも対応しやすいでしょう。
300VAクラスでおすすめのUPS
- サイバーパワー BR375 375VA/255W 矩形波 常時商用 UPS CP375 JP
アマゾンなどのECサイトでラインナップされている中で小型の最安クラスのUPSです。「375VA」という容量が丁度よくコスパに優れた選択肢といえます。
防犯カメラシステムとPS5 Proの両方を接続する場合
続いて「防犯カメラシステム」と「PS5 Pro」の両方をUPSに接続する場合を計算します。PS5 Proの消費電力が大きいので、より大きな容量のUPSが必要になります。
機器の消費電力
- 防犯カメラシステム: 39W
- PS5 Pro: 公表値はまだありませんが、現行モデルのPS5(通常版)の消費電力はゲームプレイ時に最大220W程度とされています。ここではPS5 Proの消費電力を最大300Wと仮定して計算します。
合計消費電力(W)
- 39W + 300W = 339W
必要VAの計算
- 力率を0.7と仮定します。
- 339W ÷ 0.7 ≒ 484VA
PS5のようなゲーム機は、停電時に突然電源が落ちるとデータの破損リスクがあるため、安全にシャットダウンするまでの時間が必要です。ただし、PS5は非常に消費電力が大きいため、長時間のバックアップは現実的ではありません。あくまで安全なシャットダウンまでの数分間を確保するためのものと考えるのが良いでしょう。
この場合、最低でも500VA以上のUPS が必要となります。ただし、PS5の消費電力は大きく変動するため、余裕を持って800VA〜1000VAクラス のUPSを選ぶことを推奨します。
- UPSを選ぶ際は、「機器の合計Wだけでなく、VAも確認する」ことが重要です。
- 余裕を持った容量のUPSを選ぶことで、機器の増加や消費電力の変動に対応できます。
- 製品の仕様書に記載されている「出力容量(VA/W)」 を確認し、接続機器の合計値がそれを超えないようにしましょう。
1000VAクラスのおすすめUPS
- GOLDENMATE UPS 1000VA Pro/600W 153Wh
- GOLDENMATE UPS 1000VA Pro/800W 230Wh
1000VAクラスのUPSをアマゾンなどのECサイトで探すと、「GOLDENMATE」のUPSが他の商品よりも安くコスパに優れているように感じます。しかし、このGOLDENMATEの1000VAのUPSは、「600W」と「800W」の商品があり、どちらを選べば良いかUPS初心者は迷うと思います。
GOLDENMATEの1000VAのUPSで、600Wと800Wの違いは、主に出力できる最大電力(W)と、内蔵バッテリーの容量(Wh)にあります。
W(ワット)の違い
- 600Wモデル:最大600Wまでの機器を接続できます。
- 800Wモデル:最大800Wまでの機器を接続できます。
UPSのVA値は、皮相電力と呼ばれる総合的な容量を示しますが、実際に接続できる機器の最大消費電力はW(有効電力)で決まります。1000VAという同じ値でも、内部設計や部品の構成によって、供給できるWが異なります。これは、同じ排気量の車でも、モデルによって馬力(パワー)が違うようなものです。
Wh(ワットアワー)の違い
Whはバッテリーの容量を示し、「W × 時間(h)」で計算されます。つまり、Whが大きいほど、同じWの負荷をより長くバックアップできます。
- 153Whモデル:バッテリー容量が153Wh。
- 230Whモデル:バッテリー容量が230Wh。
230Whモデルは、153Whモデルよりもバッテリーが大きいため、停電時のバックアップ時間が長くなります。
力率について
メーカーが力率を明記していない場合でも、VAとWの関係から計算できます。
- 1000VA / 600Wモデル:力率は 600W ÷ 1000VA = 0.6
- 1000VA / 800Wモデル:力率は 800W ÷ 1000VA = 0.8
この計算から、800Wモデルの方が力率が高く、効率的に電力を供給できることがわかります。
どちらを選ぶべきか
接続したい機器の合計消費電力を確認して選びましょう。
- PS5 Proと防犯カメラシステムの両方を接続する場合、合計消費電力は仮に339Wでした。どちらのモデルもWの容量的には問題なく使用できます。
- ただし、より長時間バックアップしたい場合は、230Whモデルが適しています。
- 将来的に防犯カメラの台数を増やしたり、PS5 Proの他に別の機器も接続する可能性がある場合は、Wに余裕のある800Wモデルの方が安心です。
価格や必要なバックアップ時間を考慮して、最適なモデルを選びましょう。