自分の部屋で楽しめるホームシアターが約4か月かけて完成したので、作り方や予算を公開します。筆者の部屋は、一般的な6畳程度の部屋で専用のシアタールームではありません。自分の生活部屋の中に作った「ミニシアター」といった感じです。どちらかというとカジュアルなホームシアターなので、必要最低限の機材で出来るだけ金額を抑えてコスパ良く構成しました。そんな気軽に始めたホームシアターでしたが、最終的に完成したものは予想以上にクオリティが高く、映画やゲームはもちろん、音楽鑑賞が十分に楽しめるレベルのものとなりました。
6畳の部屋に作るホームシアターの構成
FL, FR:フロントスピーカー
出典:ヤマハ公式サイト
SL, SR:サラウンドスピーカー
FPL, FPR:フロントプレゼンススピーカー(ハイトスピーカー)
SW:サブウーファー
スピーカーの配置は、上の図のようにするのが理想的ですが、自分の部屋に作るミニシアターだとある程度妥協する必要も出てきます。

筆者が実際に自分の部屋に作ったホームシアターは、5.1.2chのスピーカー配置です。使用した機器は、以下の通りです。
- AVアンプ
- フロントスピーカー左右
- サラウンドスピーカー左右
- ハイトスピーカー左右
- センタースピーカー
- サブウーファー
- スピーカーケーブル
- HDMIケーブル
- eARCまたはARC対応のテレビ
- インシュレーター・オーディオボード
AVアンプ
AVアンプはドルビーアトモスに対応したモデルを選ぶのがおすすめです。ドルビーアトモスは、いわゆる立体音響で、これまでの平面だけのサラウンドに対して高さ方向の音声情報も追加したものです。映画だけでなくPS5などのゲームもドルビーアトモスに対応してきており、ホームシアターで楽しめるコンテンツがどんどん増えてきています。

筆者が使用しているAVアンプはヤマハ RX-V6Aで、ヤマハのドルビーアトモスに対応したAVアンプの中ではエントリーモデルに当たります。ドルビーアトモスに対応した映画やゲームを楽しめるのはもちろんですが、楽器メーカーのヤマハらしく音楽鑑賞がとても楽しいのが特徴です。シネマDSP 3Dの音場プログラムと複数のスピーカーを組み合わせた立体音響による音楽鑑賞は、ステレオスピーカーで聴くのとは違った楽しみ方が味わえます。
ハイトスピーカー(天井スピーカー)は2つまでしか付けられないので、将来的に4つ以上のハイトスピーカーを付ける予定があるなら、上位のAVアンプを選ぶ必要があり、金額は一気に上がります。
部屋に合わせた視聴環境をフルオートで実現するYPAO
ヤマハのAVアンプのほとんどの機種に搭載されているYPAO(Yamaha Room Acoustic Optimizer)は、視聴環境に合わせた各スピーカーの音量調整を自動で行ってくれます。実際の部屋では前後左右で異なってしまうことの多い設置条件や、メイン用とサラウンド用でかけ離れてしまいがちなスピーカー自体の特性を可能な限り均一にしてシネマDSPの音場効果をより高める機能です。

フロントスピーカー
フロントスピーカーは、出来るだけ良いものを選びましょう。フロントスピーカーが良いとホームシアターの質がグッと上がります。憧れのブランドの欲しいスピーカーがあると思うので、そのスピーカーを頑張って手に入れたほうが満足感は高いです。少し大げさに言うと、フロントスピーカー以外のスピーカーは、配置さえしっかりしていれば適当で構わないので、多少無理してでもフロントスピーカーに投資しましょう。ツィーター(高音用ユニット)が視聴位置の耳の高さにくるように合わせる必要がありますが、トールボーイ型を選ぶとスピーカースタンドを別途用意する必要がなく、予算や手間が省けます。

筆者が使用しているフロントスピーカーは、ヤマハ NS-F350です。ハイレゾの再生に適したツィーターと、16cm径のウーファー2発による豊かな低音が特徴のスピーカーです。サウンドバーの小口径スピーカーユニットでは味わえない大口径の迫力は、映画やゲームを抑えて音楽鑑賞がメイン趣味になってしまうほどです。このスピーカーとヤマハのAVアンプの音場プログラムで聴くアマゾンミュージックのハイレゾ楽曲がとても楽しいです。また、サブウーファー無しでも迫力の低音が楽しめます。
各種ECサイトでの実売価格は、約4万円(1本)なので決して高すぎない価格も魅力的です。


インシュレーター・オーディオボード
折角フロントスピーカーを良いものにしたのであれば、フロントスピーカーのオプションとしてインシュレーターとオーディオボードの設置をおすすめします。インシュレーターとオーディオボードは、スピーカーの下に設置して振動を抑えるためのものです。スピーカーを床に直置きした場合と比べて、音質はクリアになります。ただし設置は後回しにしても全然構いません。その方が設置前後の変化を感じることができて「チューニングする楽しさ」が分かると思います。ここでも出来るだけ金額を安く済ませる商品選びをしました。

サラウンドスピーカー
サラウンドスピーカーは、安物でも構わないので絶対に設置しましょう。自分の後ろの気配を感じることができる、ホームシアターの醍醐味とも言えるスピーカーです。今までテレビを見ていた時は、前からしか音が聞こえなかったので、初めてホームシアターをやった時に後ろから音が聞こえてくるというのが一番の衝撃でした。
壁を背にしていて自分より後方に設置出来ない場合は、真横に設置しても構いません。こちらもフロントスピーカーと同様に、視聴位置の耳の高さに合わせる必要がありますが、トールボーイ型を選ぶとスピーカースタンドを別途用意する必要がなく、予算や手間が省けます。

筆者が使用しているサラウンドスピーカーは、ヤマハ NS-F210です。設置場所が部屋の中心部にきてしまい、毎回片付ける必要がありますが、重量が約7kgと軽いので移動しやすいです。インシュレーターとオーディオボードが付属しているのも嬉しいポイントです。
当初このスピーカーより小さなサラウンドスピーカーを使用していましたが、それでも違和感はありませんでした。ヤマハのAVアンプには、大小異なるスピーカーでも自動で音量を調整してくれる機能があるので安心です。その経験からサラウンドスピーカーは、配置さえ正確なら何でもOKという印象です。6畳でのミニシアターレベルだと高価なサラウンドスピーカーは必要ないので、その分フロントスピーカーに投資しましょう。
ハイトスピーカー
アマゾンのプライムビデオは、ドルビーアトモスに対応した映画が少なく、ハイトスピーカー(天井スピーカー)が鳴らない5.1chの映画が多いですが、それでも十分に楽しいです。
ドルビーアトモスの特徴でもある高さ方向の音響を表現したハイトスピーカーは、設置のハードルが高い割に、実はあまり上から音がする感じがしないので後回しにしても構いません。ヤマハのAVアンプ RX-V6Aにはドルビーアトモスハイトバーチャライザーという機能があり、ハイトスピーカー無しでもバーチャル3D音場を再現できます。もし、上からの音に期待してドルビーアトモスを始めたのであれば、ハイトスピーカーではなくトップスピーカー(天井埋め込みタイプのような上から下に向けたスピーカー)を頭上に設置する必要があります。


また、ホームシアターの使用目的によってハイトスピーカー(天井スピーカー)の鳴り方が異なるので、それぞれの違いを簡単に解説します。
映画でのハイトスピーカー
ドルビーアトモスに対応した映画は、作品によってハイトスピーカー(天井スピーカー)の鳴っている時間が大きく異なります。音の移動がダイナミックでハイトスピーカーが頻繁に鳴っている作品がある一方、約2時間の映画を通してほとんどハイトスピーカーが鳴らない作品もあります。映画メインでホームシアターを楽しむ場合、せっかく苦労して設置したハイトスピーカーがお休みしていることも多いので「後回しにしてもいい」と言ったのはそのためです。
PS5でのハイトスピーカー
PS5の3Dオーディオに対応したゲームをプレイすると、ハイトスピーカー(天井スピーカー)は常に鳴っています。例えば、プレイヤーの頭上で音がした場合はハイトスピーカーが大きく鳴り、プレイヤーと同じ高さで音がした場合はハイトスピーカーが弱めに鳴ります。オブジェクトオーディオの理論に基づいているのを感じることができ、ハイトスピーカーがあることで高い没入感が得られます。

ホームシアターの使用目的がPS5メインであればこちらの記事を参考にしてください↓

シネマDSPでのハイトスピーカー
ヤマハのAVアンプの特徴である「シネマDSP」は、映画館やコンサートホールの音場を表現した機能ですが、ハイトスピーカー(天井スピーカー)は常に鳴っています。特に音楽鑑賞用のプログラムを選択するとハイトスピーカーは常に全開で鳴っています。ヤマハのAVアンプの場合は、ハイトスピーカーがカギとなるのでこちらの記事を参考にしてください。


筆者は、当初カーテンレールのフックにハイトスピーカーを引っ掛けて設置していました。設置はとても楽ですが、基本的にカーテンや窓を開けない前提です。
スピーカーは、ヤマハ NS-B210です。10mのスピーカーケーブルが付属するので、この長いスピーカーケーブルをハイトスピーカーではなくサラウンドスピーカー用として、天井を伝って後方まで回しています。

フロントスピーカーに背が高いトールボーイ型を導入したことにより、ハイトスピーカーとの距離が近くなってしまったので、ハイトスピーカーを更に上に設置することにしました。ドリルで壁に穴を開けて、そこにタップねじをねじ込んで、スピーカーを引っ掛けるためのフックを作りました。

壁に固定したタップねじにスピーカーを引っ掛けて設置完了です。
頑張ってこの高さに設置できれば、ヤマハのAVアンプが本領を発揮して、音場空間が広がった壮大なホームシアターとなります。特にシネマDSP 3Dとの相性が良く、アマゾンミュージックでハイレゾ楽曲を聴くと感動レベルの音楽体験ができます。ただし、音が上から聞こえてくる感じは薄くて、どちらかというと前方から音がします。よく言う「ヘリコプターが頭上を飛んでいる」ような再現をしたいなら、やはりトップスピーカー(オーバーヘッドスピーカー)の配置にするしかありません。フロントハイトスピーカーはどちらかというと前方上方の空間を広げるといったイメージです。
ハイトスピーカーを設置する場合は、天井付近への設置がネックとなるかもしれません。その場合は、天井反射を利用したイネーブルドスピーカーというものをフロントスピーカーの上に置くと設置が楽になりますが、ヤマハのAVアンプでのおすすめ配置はやはりフロントハイトです。
センタースピーカー
センタースピーカーの主な担当はセリフです。センタースピーカーが無い場合は、その役割をフロントスピーカーが担当します。もし、コストを抑えてホームシアターを組むのであれば、センタースピーカーを無理して購入する必要はありません。一度ホームシアターを組んでみて、自分が本当にセンタースピーカーが必要だと思ってから検討すれば十分です。

筆者は、中古のスピーカーセットを買った時に付いてきたセンタースピーカー(フルレンジ8cm径スピーカー×2)を特に不満がないので引き続き使用しています。
センタースピーカーを耳の高さに合わせるのは難しいので、角度を付けて応急処置しています。テレビ台の高さが低いというのが一番の原因ですが、他に何か良い設置方法が浮かばないので今のところ様子見です。
センタースピーカーを度々オフにするこがあるのも、筆者があまり乗り気でない理由の一つです。例えば、ヤマハのAVアンプのシネマDSP 3Dの音楽鑑賞用プログラムを選択するとセンタースピーカーが自動でオフになります。また、ブルーレイでコンサートを視聴するときは、手動でセンタースピーカーをオフにします。コンサートの視聴は、音量を上げてライブの臨場感を追求するので、センタースピーカーをオフにするとフロントスピーカーの音量が上がり大迫力になります。フロントスピーカーの性能に見合ったセンタースピーカーを選ばないと足を引っ張ってしまうようです。筆者が使用している強烈なフロントスピーカーのヤマハ NS-F350に合わせるなら、センタースピーカーはヤマハ NS-C500(12cm径ウーファー)あたりにしないと活躍できなそうです。
サブウーファー
サブウーファーの低音もホームシアターの醍醐味と言えます。映画の爆発のシーンなどは床に地響きが伝わってきて大迫力です。
仮にフロントスピーカーを含めた全てのスピーカーが小型でリーズナブルなものだったとしても、そこにサブウーファーが加わることよって全体として一気にリッチな音響に変わります。つまり必ずしも巨大なフロントスピーカーを用意する必要はありません。

筆者が使用しているサブウーファーは、ヤマハ NS-SW050で、ヤマハのカタログ上で一番安いモデルですが、6畳のミニシアターにはオーバースペックなくらい十分な低音です。

スピーカーケーブル
スピーカーケーブルにこだわるのはホームシアター上級者になってからで十分でしょう。筆者もスピーカーに付属していたスピーカーケーブルや、中古のスピーカーケーブルを使用していますが、それでも十分に楽しめています。アマゾンなどで購入する場合は、バナナプラグ付きのスピーカーケーブルを選ぶと接続が楽になります。
HDMIケーブル
HDMlケーブルは、AVアンプとテレビを接続するために必要です。テレビのeARCまたはARCに対応したHDMI端子に接続します。2.1規格のHDMlケーブルを選ぶ必要がありますが、間違えると上手く機能しないので、迷ったらこちらを購入しましょう。
ホームシアター用のテレビ
お使いのテレビのHDMl端子がeARCまたはARCに対応していれば、テレビとAVアンプをHDMIケーブル1本で接続することができます。筆者も最初は部屋にあった3万円くらいの普通のテレビを使用していましたが、そのテレビで十分にホームシアターを楽しんでいました。テレビを新調する場合は、以下の点を満たしているとホームシアター用として優れています。
- 4K
- 映像が綺麗
- 有機EL
- 応答速度が速い(主にゲーム)
- 映像が綺麗
- ドルビービジョン
- 映像が綺麗(主に映画)
- リフレッシュレート120Hz以上
- 滑らかな動き(主にゲーム)
- eARC対応
- AVアンプと接続するために必須

筆者がホームシアター用として新調したテレビは、LGの有機ELテレビ 42C3PJAです。上記の条件を全て満たし、特にPS5 Proとの相性を考慮して選びました。LGは、毎年新型のテレビをリリースしているので、1年前の型落ちモデルを選ぶと在庫処分セールのような価格で購入できるので、コスパ良く有機ELテレビを購入する方法としておすすめです。型落ちといっても、わずか1年前のモデルなので、その機能は「ほぼ最新」といえます。
ちなみに筆者が購入したときは、定価22万円に対し新品が9万円台でした。

今回のスピーカー配置でのおすすめの設定

今回のスピーカー配置は、フロントスピーカーが大型で、それ以外のスピーカーが小型という組み合わせです。従って、サラウンドスピーカーとフロントプレゼンススピーカーの音量を高めに設定すると良い感じです。ハイレゾの楽曲をシネマDSPの音場プログラムで聴くと包囲感が増して気持ちいいです。左右スピーカーの音量の違いはYPAOによる自動計測の値を参考にしています。
6畳の部屋で楽しめるホームシアターの予算は約20万円
筆者が自身の部屋に作ったホームシアターで実際に購入した機器の金額をまとめました。価格は、各種ECサイトでの実売価格で、日々変動しているので大まかな目安となります。
AVアンプ:ヤマハ RX-V6A 約5万円
サブウーファー:ヤマハ NS-SW050 約1万8千円
フロントスピーカー:ヤマハ NS-F350 約8万円(2本)
サラウンドスピーカー:ヤマハ NS-F210 約2万4千円(2本)
ハイトスピーカー:ヤマハ NS-B210 約1万1千円(2本)
センタースピーカー:デノン 中古スピーカーセット 約4千円
スピーカーケーブル:上記の中古スピーカーセット等に付属
インシュレーター:フロントスピーカー用 約3千円
オーディオボード:フロントスピーカー用 約4千円(2枚)
HDMIケーブル:エレコム製2.1規格 約1千円
テレビ:LG 42C3PJA 約10万円
合計:約29万5千円
全合計額は約30万円ですが、テレビを除外したオーディオ類だけだと約20万円です。
このオーディオ類の合計額約20万円からフロントスピーカー代(約8万円)を引くと、オーディオ類の合計額は約12万円となります。つまり「12万円+お好みのフロントスピーカー代」と考えると予算の目安が立てやすいかもしれません。