前回筆者はヤマハのAVアンプ RX-V6Aを購入して、5.0.2chのドルビーアトモスに対応した「ミニシアター」を自分の部屋に作りました。練習として中古の小型スピーカーを実際に設置してみて、ホームシアターのコツをつかんだので、今回は本番としてスピーカーをグレードアップして、より迫力を求めた方向へとチューニングしていきたいと思います。まだサブウーファーを導入していませんが、今回設置するスピーカーが十分に低音が出そうなので、設置してから検討したいと思います。
今回フロントスピーカーとして採用したのはヤマハのNS-F350です。NS-F350はトールボーイ型のスピーカーで16cm径のウーファーを2つ備えた余裕の低音とハイレゾ音源の再生に適したツィーターを備えています。ホームシアターとしての映画の迫力はもちろん、Amazon Musicなどのハイレゾ音楽配信サービスとのマッチングも図ってこのスピーカーを選びました。価格も高すぎず(ECサイトで1台約4万円)、サイズも「部屋の一画でミニシアター」としてギリギリ設置可能な大きさかと思います。
ヤマハ NS-F350をフロントスピーカーとして設置

ヤマハ NS-F350のサイズは、幅220×高さ1157×奥行339mmです。届いた時の箱の大きさに驚きましたが、本体は思ったよりコンパクトです。テレビ台の長さは約1mでテレビは32インチ、スピーカーの端から端までは約153cmです。バスレフポートがスピーカーの後ろにあるので、後ろの壁に寄せすぎないように設置しました。AVアンプは、ヤマハ RX-V6Aです。

ヤマハ NS-F350は、3cmツィーターと13cmミッドレンジ、そして2本の16cmウーファーを搭載した3ウェイ・4ユニット構成のスピーカーです。ツィーターは、ハイレゾ音源再生に必要な45kHz(-10dB)までの再生周波数帯域を確保しています。
スピーカー前面は黒鏡面ピアノフィニッシュ仕上げで、周囲は木目調となっています。サランネットは付属しますが、撮影のため外しています。
スピーカー端子は、一般的なシングルワイヤリング接続の他に、2組のスピーカーケーブルを用いるバイワイヤリング接続にも対応しています。
スピーカーのバイワイヤリング接続とは?
バイワイヤリングとは、1つのスピーカーに対して2組のスピーカーケーブルを使って接続する方法です。通常、スピーカーは高音域と低音域を分けるネットワーク回路が内蔵されており、バイワイヤリング対応のスピーカーであれば、このネットワーク回路の入力端子が2つに分かれています。それぞれにケーブルを接続することで、高音域と低音域の信号をより独立して伝送することができ、クリアなサウンドが得られる可能性があります。特に、ウーファーから発生する逆起電力がツイーターに与える影響を低減し、高音域の透明感が増すと言われています。
型式 | 3ウェイ・バスレフ型(非防磁) |
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スピーカーユニット | 16cmコーン型ウーファー×2、13cmコーン型ミッドレンジ、3cmアルミドーム型ツィーター |
再生周波数帯域 | 35Hz~45kHz(-10dB)~100kHz(-30dB) |
インピーダンス | 6Ω |
許容入力 | 100W |
最大入力 | 200W |
出力音圧レベル | 88dB |
入力端子 | バナナプラグ対応ネジ式(バイワイヤリング可) |
クロスオーバー周波数 | 1.4kHz、3.8kHz |
外形寸法(幅×高さ×奥行) | 220W×1157H×339Dmm |
質量 | 25.9kg |
付属品 | サランネット、取扱説明書 ※スピーカーケーブルは付属していません。 |
定価(税込) | 55,000円(1台) |
実売価格は各種ECサイトで約4万円(1台)です。
フロントスピーカーに合わせてサラウンドスピーカーもリニューアル
フロントスピーカーの大型化に合わせてサラウンドスピーカーもリニューアルしました。採用したスピーカーは、ヤマハ NS-F210です。フロントスピーカーのNS-F350に比べて、ヤマハのカタログ上では二回り小さなトールボーイ型スピーカーです。

フロントスピーカーと並べてみるとコンパクトなのが分かります。外形寸法は、幅236×高さ1050×奥行236mmです。

生活部屋の中に作ったミニシアターなので、使わないときは片付ける必要があります。重量は7.3kgなので移動もしやすいです。
型式 | 2ウェイ・バスレフ型(非防磁) |
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スピーカーユニット | 8cmコーン型ウーファー×2、2.2cmバランスドーム型ツィーター |
再生周波数帯域 | 50Hz~45kHz(-10dB)、~100kHz(-30dB) |
インピーダンス | 6Ω |
許容入力 | 40W |
最大入力 | 120W |
出力音圧レベル | 86dB/2.83V,1m |
入力端子 | バナナプラグ対応ネジ式 |
クロスオーバー周波数 | 8kHz |
外形寸法(幅×高さ×奥行) | 236W×1050H×236Dmm(スタンド含む) |
質量 | 7.3kg |
付属品 | スピーカーケーブル(4m)、フロントカバー、取扱説明書 |
定価(税込) | 19,800円(1台) |
ハイトスピーカーはより高い位置へ


ハイトスピーカーは、元々サラウンドスピーカーとして使用する予定で購入したヤマハ NS-B210を用いました。

カーテンレールのフックに引っ掛けて設置していたハイトスピーカーですが、フロントスピーカーの背が高くなったので、ハイトスピーカーとの距離が近くなってしまいました。この状態で何度か視聴しましたが、やはりもう少し高い位置に設置したいと思うようになりました。

設置方法は、説明書に従って壁にタップねじを打ち込んで「壁掛け」する方法にしました。
先ずドリルでネジより小さな穴を空けて、次にネジをプラスドライバーでねじ込んでいくと、きつめに固定できます。

30分くらいで2つとも設置できました。見た目もいい感じです。この方がより空間の広がりを感じることができるようになった気がします。

型式 | フルレンジ密閉型(非防磁) |
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スピーカーユニット | 8cmコーン型フルレンジ×2 |
再生周波数帯域 | 75Hz~35kHz(-10dB)、~50kHz(-30dB) |
インピーダンス | 6Ω |
許容入力 | 40W |
最大入力 | 120W |
出力音圧レベル | 86dB/2.83V,1m |
入力端子 | バナナプラグ対応ネジ式 |
外形寸法(幅×高さ×奥行) | 105W×215H×132Dmm |
質量 | 1.6kg |
付属品 | スピーカーケーブル(10m)、取扱説明書 |
定価(税込) | 7,480円(1台) |
床を揺らす低音は部屋が映画館やコンサート会場に変わる

準備が整ったところでヤマハ NS-F350を実際に鳴らしてみると、とにかく低音が凄いです。流石に16cm径のウーファー2発は伊達じゃありません。床が振動する迫力に、設置を検討中だったサブウーファーが不要だと思いました。アパートなどの集合住宅でNS-F350の本領を発揮させるのは騒音の問題から不可能でしょう。AVアンプの音量を-35dBに設定して、やや大きめと感じる音量で再生すると、隣の部屋はもちろん、下の部屋までガンガン聞こえます。もし大きな音が鳴らせる環境で映画館のような迫力を再現したいなら大変オススメなスピーカーです。また、夜に音楽鑑賞をするときは、音量を-55dBまで絞っていますが、小さな音量でも低音が効いていて十分に楽しめるスピーカーです。
ネット配信サービスで映画鑑賞
ヤマハ NS-F350の十分な低音から映画との相性は抜群です。おそらくホームシアター用のスピーカーとして映画との相性を第一優先で設計されていると思われます。
アマゾンプライムビデオやNetflixでいくつか映画を視聴してみました。「ムーンフォール」のようなディザスタームービーや「ゴジラ-1.0」の大爆発のシーンが床を揺らし、部屋にいながら映画館のような迫力が体験できます。「ジュラシックワールド」では息をひそめて恐竜から身を隠している静寂の中で、恐竜が歩くたびに足音で実際に床が揺れるという緊迫感が味わえます。
ブルーレイで再生すると部屋がコンサート会場に
映画鑑賞と並んでコンサート鑑賞もホームシアターが得意とするところです。ヤマハ NS-F350の床を揺らす低音と周囲のスピーカーから聞こえる観客の歓声に包まれる感覚は、まさに自分がコンサート会場にいるようです。そして、この臨場感を味わうのに一番おすすめの再生方法はブルーレイディスクで視聴することです。ネット動画配信サービスにもコンサートのような音楽コンテンツがありますが、ブルーレイの方が圧倒的に高音質です。筆者は今までコストの面からDVDを選ぶことがありましたが、今ではブルーレイの一択です。好きなアーティストがいる場合は、是非一度ブルーレイで見ることを試してください。最高の時間が味わえます。
ヤマハのAVアンプの音場プログラムであるシネマDSPは、「Music Video」を選択していますが、筆者の再生環境だとセンタースピーカーが小さいので、センタースピーカーを「切」にした方が、フロントスピーカーが100%の仕事をしてくれて迫力が増します。
組み合わせるセンタースピーカーは要注意
今回フロントスピーカーとして導入したヤマハ NS-F350は、どちらかというと大きなスピーカーという部類に入ります。ここに小型のセンタースピーカーを組み合わせてしまうと、システム全体に割り当てられる音量の大部分をセンタースピーカーに持っていかれてしまい、迫力が大きく下がります。これではせっかくのヤマハ NS-F350が台無しです。センタースピーカーは、単なるセリフ担当だけではなく、ホームシアターのスピーカーシステム全体の音量のうち、最も大きな比重を担っているという特徴があります。
筆者は、当初中古で買った小型のセンタースピーカーを使用していましたが、その後、少し大きめのセンタースピーカーとしてヤマハ NS-C210を購入しました。しかし、これも失敗で、フロントスピーカーに大きく負けてしまっています。ただ、これより大きなセンタースピーカーをテレビの前に置くと、テレビを完全に遮ってしまうので、一旦センタースピーカーの最適化は保留としています。ちなみに後述するヤマハのAVアンプの機能である「シネマDSP」の音楽鑑賞用プログラム使用時には、センタースピーカーが自動でオフとなるので、音楽鑑賞ではこの問題を気にせず楽しめます。
音楽鑑賞としては好みが分かれるがヤマハのAVアンプと組み合わせると見事に調和
ヤマハ NS-F350は、ハイレゾ音源を鳴らすのに適したツィーターを備えているので、ハイレゾ音源の楽曲を配信しているAmazon Music Unlimitedなどの音楽配信サービスとの相性は抜群です。
NS-F350は、低音を強調したバスレフ型スピーカーなので少しボワンと鳴る「ぼやけた」印象があります。あくまで個人の好みの問題ですが、筆者は今まで音楽鑑賞用のステレオアンプで密閉型スピーカーを長年愛用してきて、キレのあるクリアで鮮明な音に聴き慣れています。なのでバスレフ型スピーカーのボワンとした「ぼやけた感じ」には音楽鑑賞として違和感を感じてしまいます。しかし、この違和感をヤマハのAVアンプ RX-V6Aが見事に解決してくれます。RX-V6AにはシネマDSP 3Dというコンサートホールやライブハウスにいるような雰囲気を再現した音場プログラムが複数用意されています。そして、この音場プログラムと組み合わせることにより「ホームシアターのスピーカーシステム」として鳴らすと全く違和感を感じることがありません。流石に同一メーカーのAVアンプとスピーカーという組み合わせは見事なバランスで、シネマDSP 3Dによる音場プログラムを曲や気分によって切り替えてコンサート気分を味わうという使い方がとても楽しいです。
シネマDSP 3D機能搭載で音楽ライフも充実♪ヤマハという楽器メーカーならではのAVアンプ

まとめ
ヤマハ NS-F350は、16cm径のウーファー2発による豊かな低音が特徴のホームシアター向きのスピーカーです。床が揺れるほどの低音は、映画館やコンサート会場にいるかのような臨場感が味わえます。この十分な低音に導入を検討中だったサブウーファーがまた見送りになってしまったほどです。
スピーカー単品としての鳴り方は、好みが分かれるところですが、ヤマハのAVアンプのシネマDSP 3Dの音場プログラムとの組み合わせで「マルチチャンネル」として再生すると素晴らしいマッチングで、Amazon Musicの有料プランを契約してハイレゾ楽曲を再生すると音楽ライフがとても充実します。手の届きやすい価格設定を考えると、コストに対する性能の満足度は100点満点で、さらに高性能なスピーカーが欲しいというような野心は全くおきません。6畳の部屋の一画で小さく始めたホームシアターですが、今回フロントスピーカーとして導入したヤマハ NS-F350の迫力で、本格的なシアターサウンドが体感できる環境に化けました。
元々は「部屋でミニシアター」のつもりでホームシアターを始めましたが、今ではミニシアターが部屋の三分の二を占領して、余ったスペースで自分が生活するという逆転現象が起きてしまいました。しかし、自分の部屋で映画館やコンサート会場にいるような非日常体験ができるというのは最高で、この結果には大満足です。

この記事を書き終わる頃にちょうどPS5 Proが届きました。PS5は、次世代のプレイステーションとして、ゲームの中に入り込んだような体験を再現するために「Tempest 3Dオーディオ」という技術に力を入れています。そして2023年のPS5のアップデートにより、このTempest 3Dオーディオがドルビーアトモスのスピーカーシステムで鳴らせるようになりました。
次はTempest 3Dオーディオに力を入れているPS5のソフトをホームシアターでプレイしていきたいと思います。果たしてゲームの世界の中に入ったような「没入感」は得られるのでしょうか!?楽しみです(続く)