「バイオハザード レクイエム」のPS5/Xbox/PC版の音声は、立体音響である Dolby Atmos(ドルビーアトモス)や3Dオーディオ(PS5)に対応しています。本作をテレビのスピーカーではなく、複数のスピーカーを配置したホームシアター環境でプレイすると、あらゆる方向から音が聴こえてきて、まるで自分がゲームの世界に入ったかのような没入感でプレイできます。今回は、本作のPS5版を5.1.2ch環境での実プレイを通じ、いかに音響技術をサバイバルホラーの演出に昇華させているかを深掘りします。
プレイ環境:今回使用したホームシアターのオーディオ機器
出典:ドルビー公式サイト
筆者のオーディオ環境は、ドルビーアトモスに対応したヤマハのAVアンプ RX-V6A を核とした5.1.2chシステムです。フロント3基、リア2基、サブウーファー1基に加え、ドルビーアトモスの肝となる「天井スピーカー」2基をリスニングポイントの真上に配置しています。この「高さ」の表現力が、本作の恐怖体験を決定づけることになります。


「バイオハザード レクイエム」の音響レビュー
ここからは、本作をホームシアター環境で実際にプレイした際の音響レビューをお伝えします。ネタバレを含む可能性があるので、プレイする予定がある場合はご注意ください。
「ただ歩くだけのシーン」に込められた開発者の意図

物語の冒頭、FBI捜査官であるグレースが街中を歩いて調査する建物へと向かうシーンがあります。このシーンは、一番最初にプレイヤーとしてグレースを操作できる訳ですが、ただ歩いているだけで、敵と遭遇するわけでもアイテムが落ちている訳でもなく、数秒で目的地に到着して次のイベントが発生します。もし、テレビのスピーカーで本作をプレイしていたら「このシーン別にいらないのでは?」と感じるかもしれません。しかし、ホームシアター環境では、ここが本作の音響クオリティを知らしめる「最高のデモンストレーション」であることに気づかされます。
街中の人々や車などの「オブジェクト」が移動する
ドルビーアトモスの特徴のひとつに「オブジェクトオーディオ」というものがあります。オブジェクトオーディオとは、音の素材(オブジェクト)に「3次元の位置情報」を持たせて配置・移動させることができる立体音響技術です。冒頭の「街中を歩くシーン」では、歩道を行きかう人々や車道を走る車に「オブジェクト」として音の位置情報が与えられています。これをホームシアター環境で実際にプレイすると、前から歩いてきた人とすれ違う場合、足音がフロントスピーカーからリアスピーカーに音の軌跡として滑らかに移動していきます。自分の右側を走る車のエンジン音も、その距離感と速度が音だけで正確に把握できるのです。
ドルビーアトモスの特徴である高さ方向の表現

この冒頭の街中を歩くだけのシーンでは頭上を列車が走っています。当然、この列車にも「オブジェクト」として音の位置情報が与えられています。頭上の音は天井スピーカーから聴こえ、視界に映っていなくても音で頭上を列車が走っているとプレイヤーは認識できます。そして、頭上の音に釣られて実際にカメラを上に向けてみると、本当に頭上を列車が走っているという、まるで現実のようなリアルさがあります。
このような高さ方向の音響表現は、ドルビーアトモスの特徴のひとつです。頑張って天井スピーカーを設置することによって、より没入感の高い立体音響空間でプレイできます。

たった数秒の「ただ歩くだけのシーン」に最新の立体音響技術が詰め込まれていて、一番最初にこのシーンをわざわざ入れたことは、「これから、このレベルの立体音響空間で恐怖を味わってもらう」という、カプコンからの挨拶のように感じられました。
天井スピーカーによって高さ方向を感じることができるその他のシーン例
- 雷の音
グレースが最初に調査する建物。最初雨だった天気が、空を切り裂く雷に変わり、調査の終盤で恐怖を煽る。 - 天井から迫る「The Girl」
天井の穴から出現する「The Girl」と恐怖の鬼ごっこ。思わずかがみたくなる。 - シンガーゾンビ
1階と2階が吹き抜けになっているエリアで、自分が1階から侵入した際、頭上から不気味な歌声が響く。 - 施設内のアナウンス
広い空間特有の反響音が天井から降り注ぎ、建物内に閉じ込められている閉塞感を助長する。 - 空から迫る迫撃砲
この音が頭上から聴こえてしまったらほぼアウト。その前に移動(回避)している必要あり。
サブウーファーの役割:空気の震えが「恐怖」を実体化させる
重低音を担当するサブウーファーを導入すると、映画館でアクション映画を観たときのような重低音による迫力が得られ、まさに「自宅が映画館」へと変貌します。特に本作のように演出に心血を注いでいるサバイバルホラーでは、サブウーファーが描き出す「地を這うような重低音」が、恐怖を視覚から肌へと伝播させる重要な役割を果たします。

バイオシリーズ共通の欠点が解消:「最高の銃声」への進化
バイオハザードシリーズには銃声が軽い作品が多く、酷いものだと銃声が「パスパス」としょぼい音を放ち、ゲーム全体を安っぽい印象にしてしまっています。しかし、本作ではその残念な銃声が刷新され、火薬の爆発する音が重低音としてサブウーファーに反映されており、撃っていて非常に気持ちいいものに仕上がっています。

特筆すべきはマグナム(レクイエム)の銃声で、マグナムを撃つと爆発音のような衝撃が発せられます。この時、ホームシアター環境でプレイしていると、サブウーファーの重低音で床が揺れる程で、気持ちいいを通り越して、癖になる中毒性のような快感が得られます。本作のマグナム(レクイエム)は、タイトルの名を冠した特別な武器なので、そこに敢えてこの強めの重低音を入れてきたのは、武器に特別感を感じられる粋な演出と言えます。このマグナムの銃声は、テレビのスピーカーでプレイしていたら絶対に味わえない、カプコンがホームシアターユーザーだけに与えてくれた最高のプレゼントです。詳しくはこちらの記事で解説しています↓

巨大な敵の「圧」をサブウーファーで受ける
視覚的な巨大さ以上に、その「重さ」を音で表現するのがサブウーファーの仕事です。
- 通路いっぱいに迫る「チャンク」: 巨体が迫りくる際の地響きのような轟音は、サブウーファーがあることで「逃げ場のない圧」へと変わります。
- 驚愕のブルドーザー襲来シーン: 初見で誰もが度肝を抜かれたであろうこのシーン。地鳴りとともに迫る重機特有の重量感あるサウンドは、ぜひホームシアターの重低音で体感してほしい「音のスペクタクル」です。
リアスピーカーから感じる視覚を超えた「耳で視る」恐怖
ホームシアターの真髄は、画面の中に映っていない「自分の背後」を音で可視化できることにあります。左右後方にサラウンドスピーカー(リアスピーカー)を配置することで、テレビのスピーカーでは決して再現できない「360度どこから襲われるか分からない」という極限の緊張感が生まれます。
グレース編の没入感:無力ゆえの「音」への依存
特に、戦闘力が低く「逃げる・隠れる」が主体となるグレース編において、このリアスピーカーの効果は絶大です。背後からじりじりと迫りくる追跡者の足音、床板が軋む音、あるいは暗闇から漏れ出るうめき声……。自分の真後ろからその「気配」がダイレクトに伝わってきた時の恐怖は、文字通り鳥肌が立つほどです。「見えないけれど、確実にそこにいる」という感覚が、サバイバルホラーとしての没入感を一段上のステージへと押し上げています。
そして、この視界に映らない敵の気配はゲーム攻略においても非常に重要です。
オブジェクトオーディオを攻略に活かす
オブジェクトオーディオの真価は、視覚情報を補完する「第2の目」として機能する点にあります。敵を視界に捉える前に、音だけで「右斜め後ろにいる」などと正確に確信できるため、無駄なカメラ操作を省き、最短ルートでの回避や、先制攻撃が可能になります。リソースの限られた本作において、音による位置把握は「弾薬と体力を守るための最強のデバイス」と言っても過言ではありません。
注意点:過信が招く「静かな恐怖」
しかし、この「音のレーダー」には注意点もあります。足音の大きいボス級の強敵は容易に捉えられますが、問題は音を立てずに忍び寄る雑魚ゾンビです。特に乱戦時、自分の激しい銃声によって背後の微かな足音が打ち消される(マスキングされる)と、リアスピーカーを過信している隙に背後から組み付かれる、という事態が起こり得ます。「音響は万能ではない」という緊張感こそが、本作のホラー体験をよりリアルなものにしています。
オブジェクトオーディオの限界か?階層と遮蔽物の問題
最新の立体音響技術をもってしても、まだ「おかしな聴こえ方」をする場面に遭遇します。これは、アンプやスピーカーの性能ではなく、ゲーム内の音響エンジンにおける「遮蔽物(オクルージョン)」の処理に課題があると感じました。
- 階段付近の定位バグ: 「上の階」にいる自分に対し、敵が「下の階の自分より後方」にいる場合、音がリアスピーカーからダイレクトに響き、敵がまるで同じ階(自分の真後ろ)にいるかのように錯覚します。上下の描き分けがオブジェクトの位置情報に完全に依存しており、フロア(床)という遮蔽物による音の減衰や変化がシミュレートしきれていない印象です。
- コンテナを透過するリッカーの足音: 小さなコンテナ内に自分が潜んでいる際、外を徘徊するリッカーの足音が「すぐ目の前」で鳴っているように聴こえます。本来ならコンテナの壁によって音はこもり、位置も特定しにくくなるはずですが、音が壁を透過して直接耳に届いてしまうため、物理的な距離感と聴覚的な距離感に乖離(かいり)が生じています。
こうした「壁や床の存在感」まで音で表現されるようになれば、没入感はさらに一段上の次元へ到達するはずです。次なるアップデートや次回作では、この「物理的な壁」の表現にも期待したいです。
「バイオハザード レクイエム」をドルビーアトモスで楽しむための設定
ドルビーアトモスに対応したサウンドバーやAVアンプをテレビに接続して、それらの機器で立体音響を楽しむ場合、「PS5本体の設定」と「ソフト(本作)の設定」の両方が必要です。

ホーム画面の右上にある [設定] > [サウンド] > [音声出力] > [音声フォーマット(優先)] を選び、「Dolby Atmos」に変更します。

ゲームを起動し、タイトル画面の [OPTIONS] > [Audio] > [デバイス] を 「ホームシアター」 に変更します。
PS5でドルビーアトモス(3Dオーディオ)の設定について、より詳しい内容はこちらの記事で解説しています↓

気軽に始められるホームシアター
「ホームシアター」と聞くと大掛かりなシステムを想像するかもしれませんが、現代ではケーブル1本でテレビに接続することが可能で、思いのほか気軽に始めることができます。
最も手軽な選択肢:サウンドバー
「気軽に始められるホームシアター」の代表格が「サウンドバー」です。テレビとサウンドバーをHDMIケーブルで接続するだけで設置作業はほぼ完了です。付属するリアスピーカーとサブウーファーがワイヤレス接続できたりと、ケーブルによる配線地獄に悩ませれることもありませんん。とにかく設置が簡単なので、アマゾンなどでクリックしたら翌日から立体音響をすぐに楽しめるのがサウンドバーの魅了です。

こだわり派の特等席:AVアンプ+スピーカー
「より本格的に、正確な位置から音を聴きたい」なら、筆者と同じAVアンプ+スピーカーの構成がおすすめです。 確かに設置には少し知識が必要ですが、ドルビーアトモスに対応した一番安いアンプが4万円くらいで買えて、後はスピーカーを繋ぐだけというシンプルな構造です。実際に一から組んでみた筆者の率直な感想は、「構えていたよりもずっと簡単だった」ということです。苦労して設置した天井スピーカーから、バイオの「高さ」を感じる音が降ってきた瞬間の感動は、一度味わうともうテレビの音には戻れません。
筆者のように出来るだけ少ない予算で効果的に3D空間を形成したいと考える人も多いはずです。「PS5に最低限必要なホームシアター機材」の選び方はこちらで解説しています↓

まとめ:ホームシアターを揃えて、初めてPS5が完成する
今回の『バイオハザード レクイエム』のプレイを通じて、立体音響(ドルビーアトモス)がもたらす体験は、単なる「音質の向上」ではなく「ゲーム体験そのものの変革」と言えます。
- 「音の挨拶」に驚く: 冒頭の数秒、ただ歩くだけのシーンに詰め込まれたオブジェクトオーディオの密度。
- 「マグナム」が快感に: サブウーファーによる重低音の刷新が、バイオ史上最高の銃声を生んだ。
- 「死角」を耳で視る: リアスピーカーによる気配の察知は、恐怖を倍増させ、攻略の鍵となる。
- 「高さ」のリアリティ: 天井スピーカーによって、雷鳴や頭上の敵が「実在」する恐怖。
バイオ9だけではない、3Dオーディオの可能性
現在、PS5では本作以外にも多くのタイトルがドルビーアトモス(3Dオーディオ)に対応しています。 『モンスターハンターライズサンブレイク』の画面内に存在する多数のオブジェクトオーディオによる定位感や、『Returnal』で銃から発射された弾道の軌跡を音で感じることができる体験など、同じソフトでも「音」が変わるだけで、全く別のゲームをプレイしているかのような衝撃を味わえます。

ホームシアターは「PS5の標準装備」であるべき
4K/120Hz対応の美しいグラフィックは、今や当たり前になりつつあります。しかし、その映像にふさわしい「音」をセットにしなければ、開発者が本当に見せたかった(聴かせたかった)世界を半分も見逃していることになります。
「ホームシアターを揃えて、初めてPS5が完成する」
実際に一歩踏み出し、床を揺らす重低音と、頭上を掠める音を体感した筆者は、今ではそう断言できます。トリガーを引くその瞬間、その音が「テレビから鳴る音」なのか、「その場に響く爆音」なのか。その違いが、ゲームライフを劇的に変えるはずです。



